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できたての美味しさを守る!
「炭素の膜」で進化したペットボトル飲料

DLCコーティング装置の写真

今やお茶もお酒も炭酸も!実は身近なDLCコーティング

コンビニやスーパーなど、いたるところで販売されているペットボトル飲料。今や当たり前の存在で、「いつも冷蔵庫やかばんに必ず入っている。」という人も多いことだろう。

しかしその美味しさを守るために、ペットボトルの内側に“炭素の薄い膜”が張られていることをご存じだろうか?

これは「DLC(注)コーティング」という飲料の品質を守る革新的技術だが、そもそもなぜペットボトルにコーティングする必要があるのか?まずは、その理由をひも解いていこう。

  • ダイアモンドの物性に類似した炭素
ペットボトル飲料購入風景写真

ペットボトルは空気やガスが通りやすい!?

清涼飲料用の容器として、国内でペットボトルが使われ始めたのは食品衛生法が改正された1982年のこと。
ジュースといえば瓶入りが一般的だった頃に比べて、個性的なデザイン、軽くて丈夫な上にフタ付きで持ち運びやすい。何よりもその手軽さと利便性から、消費者の飲用シーンがまたたく間に広がり、ペットボトルの需要はグングンと高まっていった。

一方で、缶やビンよりも酸素や二酸化炭素が透過しやすいため、内部に酸素が侵入したり炭酸や水分が流出しやすいことから、お茶や炭酸飲料、ワインなどのアルコール飲料に利用することが難しかった。

ペットボトル飲料購入風景写真

“酸化しない・逃がさない”ペットボトルの誕生

この問題を解決しようと、三菱重工機械システム(MHI-MS)が大手飲料メーカーと共同開発したのが、「三菱DLCコーティング装置」だ。

DLCとは、“Diamond Like Carbon”の頭文字。
文字どおり、宝石のダイヤモンドに似た分子構造をもつ素材だが、DLCコーティングに使用するDLCは炭素と水素で出来ているため、コーティングするとペットボトルの変形に追従する柔軟性があり、ボトルの透明性を保ちつつ酸素や炭酸ガスを通さなくする、高いガスバリア性を発揮するのだ。

ペットボトルの内側に、薄い炭素膜をはるには?

当時業界ではPET樹脂(注)で作られたペットボトルに、DLCの膜を張る事は難しいとされてきた。

しかし三菱DLCコーティング装置は独自のコーティング技術を編み出し、ペットボトルのガス透過を1/10以下に抑えることに成功したのだ。
まずはその手順と、画期的技術のポイントをまとめてみよう。

  • ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)という、石油由来の樹脂。強度に優れ透明度が高い反面、耐熱性が低いといった特性を持つ。

DLCコーティングの手順

  • Step1

    真空装置で空気を抜いて、ペットボトルが入った電極チャンバー内を真空状態にする。

技術
ポイント

超高速で生み出す真空状態

真空状態をつくるには一般的に数分から数十分以上かかるが、ペットボトルの生産は1分間に数百本ベースと“超高速”の世界。
MHI-MSは世界中のポンプメーカーをリサーチし、最先端の技術でわずか2秒で真空にする装置を生み出した。

DLCコーティングの手順のイラスト
  • Step2

    炭素と水素からなる、アセチレンガスをペットボトルに導入する。

DLCコーティングの手順のイラスト
  • Step3

    電極チャンバに高周波を加えると、ガス分子が分解してプラズマ状態になる。

    • 高周波で物質をイオン化プラズマ状態にすること
  • Step4

    分解したプラズマ状のガス分子はボトル内を高速で飛び交っており、ペットボトルの表面にぶつかる事で膜になる。
    こうして10~40ナノメートルの薄い膜が張られた、DLCコーティングが完成!

技術
ポイント

樹脂とプラズマの相性の悪さを克服

電気でガスを分解する“プラズマ化”は温度が非常に高く、ペットボトルの樹脂を溶かしてしまう。
ボトルを傷つけないように、独自の高周波プラズマ技術を採用すると共に、高いバリア性能を目指して真空度率・ガス量・電気のバランスを徹底的に研究した。

DLC成膜の様子
 

炭酸や水分を封じこめ、酸素を通さない高バリア性能

構想から3年を経て完成した三菱DLCコーティング装置の処理能力は、ペットボトル1本あたり6秒の高速でDLC膜を張り、1万2,000本~1万8,000本/時間という高生産性を実現した。

これに伴い、DLCボトルはこれまで使われてこなかった飲料にも活用されるようになり、2004年にホット販売用緑茶(350ミリリットル)で発売されて以来、500ミリリットルの炭酸飲料や食用油など、飲料に限らず大小さまざまな容器に使用され、すでに暮らしに欠かせない技術となっているのだ。

酸素バリア性のグラフと炭酸ガスバリア性のグラフ
 

DLCボトルの誕生で、スーパーの売り場にも大きな変化が

「DLCボトルってパッと見で分るの?」と思う方も多いだろう。
正直に言うと、見た目ではその違いは分らない。
もしどんなものか見てみたいとお思いなら、スーパーのワイン売場に足を運んでみてほしい。実は国産ペットワインの多くは、DLCボトルなのだ。

こうした売場に並ぶワインは、以前はビンや紙パックが多かったが、2010年に“DLCワインボトル”が登場してガラリと変化。酸化せず香りや炭酸を逃がさないばかりか、デザイン面でもワインボトルらしい高級感を演出できるとあって、多くの飲料メーカーから支持を集めた。

最近では720ミリリットルのフルボトルサイズに加えて、重たいビンでは難しい大容量の1.5リットルタイプも発売されており、新商品の開発にもDLCボトルが大いに役立っている。

スーパーのワイン売場のイラスト

多様化するドリンクの進化で、もっと楽しく豊かな暮らしを

そして今ではお茶カテキンを使ったトクホ(特定保健用食品)飲料、香りが重視される日本酒やコーヒー豆の容器など、DLCコーティング技術は活躍のフィールドを広げ続けている。

ペットボトルはそもそも軽くて丈夫なので、物流の面でもメリットが大きい。
これを活かして現在、さらなる大容量化で3リットルのDLCペットボトルも開発されている。

毎月、いや毎日のように未体験の味わいや、プロレベルの香りにこだわった飲料が続々と登場している。
これからもその魅力をたくさんの人々に届けるために、“炭素の膜”で飲料を守るDLCコーティングは欠かせない。

より美味しく・楽しく・新しいドリンクの誕生を支えるパートナーとして、MHI-MSの技術革新は続いていく。