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速く、美しく、無駄なく!
世界に先駆けて拓く「新聞輪転機」の今

新聞用オフセット輪転機の写真

毎時16万部の高生産性を誇るコンパクトマシン

「世の中の新しい情報を正確・確実に届ける」という使命を帯びて、毎日発行される新聞。「新聞用オフセット輪転機」はそうした想いにこたえるべく、進化を続けてきた印刷機械だ。近年の新聞輪転機は、タワーと呼ばれる印刷ユニットが立ち並ぶレイアウトとなっており、機械の高さは4階建ての建物に匹敵する。高速で一度に大量の紙に印刷するため、かなりの迫力を感じさせる機械である。

時代によって開発コンセプトも変化しており、2000年代初めには「高生産性」、2010年前後からは省資源・省スペース化を実現する「エコ」、「小型化」が主要テーマとなった。

新聞印刷の様子を表す写真

特に2009年にリリースされた三菱重工機械システム(MHI-MS)の「DIAMONDSPIRIT(ダイヤモンドスピリット)」は、大幅なランニングコストの削減と小型化を実現しながら、1秒当たり22部、1時間に16万部という高生産性を実現。

ランニングコスト削減と印刷品質を両立させる技術や、さらに輪転機1台で2種類の印刷物を同時生産する新機能など、業界ニーズを先取りする革新性が評価され、全国の新聞社に次々と導入頂いている。

数ミクロンの調整を重ねて、高い品質を実現した折機

新聞社では近年、夜間に自社の新聞を刷り、日中は委託を受けた業界紙などのさまざまな印刷を手掛けるケースが増えている。こうした新聞広告や受託印刷には、特に「美しい仕上がり」が求められる。

新聞用オフセット輪転機は印刷を行う「印刷ユニット」と、印刷後の紙を重ねて折り畳む「折機」が、印刷物の品質を決める。

DIAMONDSPIRITは、印刷の美しさはもちろんのこと、汚れやしわが少なく、また、複数頁をずれなくきれいに折り畳める高性能な折機にもこだわっている。

大川 大輔の写真
印刷紙工機械事業本部 技術部
輪転機設計課
大川 大輔

機械設計担当の大川大輔は、コンパクトで高性能な折機を実現するための改良に携わり、ある重要装置の変更にたどりついた。

折機のメカニズム

Step1

  • 「折銅」に紙束を巻き付けていくイラスト

    重ねた紙束を「針」が引張り、円筒型の「折銅」という装置にぐるりと巻き付けていく。

Step2

  • 折ブレードが紙の中心線をとらえ、鋸が新聞を1部ずつに断裁するイラスト

    折銅から「折ブレード」という装置が現れて紙の中心線をとらえる。

    同時に、「鋸」が新聞を1部ずつに断裁する。

Step3

  • 紙が回転する「折込ローラ」で折られながら送り出されるイラスト

    紙は回転する「折込ローラ」で折られながら、送り出される。

  • 新聞のイラスト

こうして綺麗に折り畳まれた新聞が完成するのだ。

上記のような工程を、紙束を約20枚重ねた状態で1秒間に20回以上もの超高速動作でこなす折機は、運転速度を上げると機械としての難易度が格段に上がる。

特に動作に正確さや繊細さが求められる一方、高速運転時は装置や紙に自重の約100倍の遠心力がかかる。
このため、たとえば小型の折機で高速運転しようとした当初は、印刷する絵柄によってはうっすらとではあるが、対向ページに絵柄がうつる転写汚れが起きることもあった。
これは、「折ブレードが回転による遠心力でたわみ、紙を折込ローラに押し付けているから起こるのではないか…?」と大川は考えた。

高精度の調整が必要で、折機の心臓部ともいえる折ブレード。

実際にシミュレーション計算をすると、ブレードやブレードを駆動するギヤ部分のたわみ変形で、0.1ミリメートルレベルのわずかな量ではあるが、ブレードが想定位置からずれることがわかった。

大川 大輔が仕事している様子の写真

そこでたわみを低減すべく、折ブレードの回転軸を両端で支えるベアリングを1点から2点に変更。さらに、部品精度や発熱など、実際の運転環境を考慮した検討と社内試験を繰り返し、支持するポイントやベアリングの隙間もミクロン単位で調整した。

折機の改良には、この他にもたくさんの技術や工夫が盛りこまれ、転写汚れの改善のみならず、信頼性もさらに高い装置への改良に成功。さらには回転精度が高まったことで、きれいに折れて、調整が容易になる効果も得られた。

「社内で効果を確認出来ていたのである程度自信はありましたが、実際に工場でお客様から高い評価をいただいた時は、とにかく嬉しかったですね。」

印刷現場の生産性を高める「新機構」をカタチに

DIAMONDSPIRITは、ランニングコストを大幅に削減できると冒頭で紹介したが、最大の理由は「刷版(印刷絵柄を転写する薄いアルミ板)」の使用量を、半減出来ることにある。

刷版を巻きつける、「版胴」の直径を半分にする独自技術を開発し、従来は1ページあたり2ページ分の大きさの刷版が必要なところを、1ページ分に半減することに成功したのだ。

また刷版を印刷機に取りつけるには、ラインを完全に停止してオペレーターが2名1組となって1枚1枚手作業で行うが、刷版が小さくなったことで交換作業の改善にもつながった。

刷版の交換作業を行う写真

刷版の取りつけは1名が刷版を押さえ、もう1名が手動レバーで刷版のロック・解除を行う。

この人手による版交換作業をもっと簡易化して、時間も短縮できれば、生産性や経済性においてさらなる付加価値が生まれる。

そこで次に大川が取り組んだのが、「オートクランプ装置(簡易版交換装置)」の開発だった。これまで手動レバー式だった刷版のクランプ・解除を、ボタン操作に出来れば一人作業が可能になる。

しかしこの装置を用いたシステムの実現には、いくつものハードルがあった。
誰でも使い易い操作性、インキが飛散し振動する環境でも、動作し続ける耐久性などが不可欠となるからだ。

特に一人作業を実現するために、印刷機内部に新たに設置した操作パネルについては、インキや清掃用の溶剤が浸透すると劣化や故障を起こす恐れがあった。

そこで、耐溶剤性に優れた素材を探し出し、試作や要素テストを重ねて、操作パネル専用の密封構造を開発した。

オートクランプ装置の写真

「構造の他にも、設計上予測していない操作でも壊れない制御、万が一故障した時の対応マニュアルなど、予想以上に検討事項が多く、大変苦労しました。」

そして納入先の工場で、製品関係者やお客様のご協力を得て完成したオートクランプ装置は、シンプルな構造で刷版の交換時間を従来より30~40パーセント短縮することに成功したのだ。

アイデアと製品化の間にそびえ立つ壁を、どう乗り越えるか

大川は現部署に配属された当初、「新聞用オフセット輪転機は、既に完成された製品というイメージがありました。」と話す。

しかしDIAMONDSPIRITは2009年のリリース以来、より美しい紙面、多様化する印刷資材や印刷製品への対応、自動化、コスト削減と多彩な技術革新を次々と実現してきた。

そして誕生から約10年を経た現在も、お客様のニーズをヒントに多くの改善がなされ、その品質と完成度は一段と進化している。

「アイデアをカタチにするには数々のハードルがあり、思いついたところからが本当の勝負。社内の情報共有はもちろんのこと、外部メーカーの方やお客様の協力に助けられることも少なくありません。」

大川 大輔が仕事している様子の写真

実際、大川も技術部内外の関係者にレビューを依頼し、必要があれば三菱重工の総合研究所に技術相談を持ちかけると言う。

組織の垣根を超えて、モノづくりに「技術の蓄積と新しい視点」を活かせる。これこそが、技術革新を生み出し続けるMHIグループ(三菱重工グループ)の強みと言えるだろう。

メディアがもたらす“文化の創造”を次世代につなげたい

現在も、DIAMONDSPIRITのアップデートは続いている。

たとえば、紙媒体のマニュアルの電子化だ。
「電子取扱説明書に操作方法の動画を組み込むなど、オペレータの方が直感的に分かりやすく情報が見える仕組みづくりに注力しています。」

さらにIoTの導入も拡大中だ。製品の稼働データをリアルタイムに取得・分析できれば、故障の兆候や部品の交換時期をきめ細かく把握出来るため、生産ラインの安定稼働とお客様の負担低減を強力にバックアップできる。

また、新興国向けに機能を見直した製品開発への取り組みも、進んでいる。

新聞と家族の風景写真

極論を言えば、ボタンひとつで印刷物を確実に自動生産出来て、印刷準備やメンテナンスも簡単な輪転機こそが理想形。まだまだ改良の余地はあると、大川は語る。

さらに、最近設計業務に携わっている商業用オフセット輪転機では、カタログや雑誌も生産する。その為、新聞輪転機よりもさらに美しい紙面や、製本に必要とされる正確な折り畳み、そしてさまざまなな印刷フォーマットや印刷資材への対応が求められ、そこには新聞輪転機に活かせるアイデアや経験も多い。

また、印刷機械事業は標準化やモジュラーデザインといった合理的な設計と、大量の部品を設計・手配する業務システムも特長で、より付加価値の高い製品開発に取り組みやすい環境が整っている。

「私たちの製品から生み出される新聞、書籍、雑誌などは、デジタル化が進んだ現在も重要な役割を担っていると思います。それは紙媒体がプロの編集を経ており、信頼性、体系的な情報の整理、見やすさ、深さ、多様性などで、非常に高い質を持っているからです。印刷機械をとおして、国内外の文化の創造に貢献できたら嬉しいです。」

技術者紹介

  • 大川 大輔の写真

    印刷紙工機械事業本部 技術部 輪転機設計課大川 大輔

    2006年4月入社
    東京大学大学院工学系研究科卒

    愛読書:
    新しい情報やアイデアを求め、年間20冊くらいは本を買います。多くは実用書ですが、最近は子供の絵本や図鑑も多いです。「人体のふしぎ」やヨシタケさんの絵本など楽しく見ています。